Vueling Airlinesを賢く利用する 手荷物オプションのトリック

2022/11/13

2021年の「ヨーロッパのベストLCC」にも選ばれた、スペインの格安航空会社Vueling Airlines。その料金体系は、一見シンプルに見えて実は複雑です。

まず、Vuelingには、Timeflex、Family、Optima、Basicの4種類の運賃プランがあります。Vuelingのウェブサイトで便を選択すると、次にこれらのプランの中から1つを選択するよう促されます。Timeflexは最上位のプランで、日程の変更手数料無料や優先搭乗など、あらゆるサービスが含まれていますが、その分運賃も高く、もはやLCCでない航空会社(フルサービスキャリア)と遜色ありません。

どのプランも値段が安く、価格差が小さいならば、Timeflexを選べばよいでしょう。ですが、直前の予約だったり、乗り継ぎ便だったりすると、LCCとはいえ結構な値段になります。少しでも節約しようとすると、OptimaBasicを検討することになります。なお、Basicでは、持ち込み手荷物は足元に置けるもの、預け入れ手荷物は有料。週末の弾丸旅行くらいなら手荷物1つでも旅行できますが、2泊3日以上になるとやはり別に荷物が必要になります。



さて、Optimaの特典は、

  • 無料の座席指定(ただし一部の席は追加料金が必要)
  • 最大25kgの預け入れ手荷物

という2つです。

しかし私からしてみれば、預け入れ手荷物は出発前・到着後に余計な時間を取られてしまうし、ロストバゲージのリスクもあるため、何十ユーロも払ってまで追加するのはちょっとなぁって感じてしまいます。その点、手荷物を機内に持ち込めれば、預け入れ手荷物のこうしたのデメリットはありません。

さらに、これらのプランとは別に、手荷物や座席指定、機内食といったオプションも存在します。ところが、Vuelingには預け入れ手荷物を追加するオプションはあるのですが、持ち込み手荷物を追加するオプションは無いんです。

ここからは私の推測ですが、Vuelingとしては手荷物をなるべく機内に持ち込まないでほしいのです。

まず、乗客の持ち込み手荷物が規定のサイズや重量・個数に収まっているかを、航空会社が逐一チェックすることは現実的に不可能です。これはLCCに限らずフルサービスキャリアも同じことですが、オンラインチェックインが主流の今、搭乗口が開くまで、航空会社が乗客の荷物をチェックすることはできません。さらに乗客が一度機内に入ってしまえば、よほど大きな荷物を持っていない限り、乗客を咎めるのは難しいでしょう。

サイズの制限を厳しくしたところで、チェックできないならば意味がないですし、チェックするための時間と人件費を考えると割が合わなそうです。つまり、航空会社にとって持ち込み手荷物は不都合極まりないのです。

結果として、最後の方に機内に入ってきたお客さんが、手荷物を入れるスペースが無くて困る、という事態が起こりかねません。LCCは、設計時に想定されている座席数よりも多くの座席を配置した上で、なるべく搭乗率を高くして(満席に近い状態にして)収益性を高めているため、手荷物が入りきらなくなる可能性はより高くなります。そうすると、客室乗務員が空いている場所を探したりしなければならず、定時発着率や顧客の満足度が下がってしまいます。

そこでVuelingは、持ち込み手荷物を、前の座席の下に置くUnderseat bag (max. 40x20x30 cm)と、頭上の荷物入れに入れられるCabin bag (max. 10 kg and 55x40x20 cm)の2種類に分けけるというアイディアを採用しています。Cabin bagを持ち込めるのは、なんと最上位プランのTimeflexのみ。BasicはともかくOptimaでさえ、Underseat bag 1つしか持ち込めないのです。とはいえ実際の機内では、どうせ空いているならと、皆さん当たり前のように頭上の荷物入れを使っていますが、客室乗務員はいざとなれば乗客に「前の座席の下に置いて!」と言えるわけですし、多少の改善はできているはずです。

ただでさえこんな状態なのですから、持ち込み手荷物を増やせるオプションを設けるなど、もってのほかなのでしょう。

ちなみに航空会社は、座席の床の下にある貨物スペースでも収益を上げています。コロナ禍で国際線の乗客がほぼいない中でも、航空会社がかろうじて稼げていたのは、まさにこの貨物需要があったからなのです。しかしVuelingなどのLCCは、トラックでも24時間以内に到達できるような距離の近距離路線を中心としている上に、彼らが運用している小型機は貨物スペースが小さいため、多くの貨物需要を期待できません。したがって貨物スペースに入れるものは、乗客の預け入れ手荷物のみということになります。そうなると少しでも多くの乗客に、手荷物を持ち込まず、預けてもらいたいと思うのは当然です。一方で、手荷物の積み下ろしには時間も労力もかかります。このさじ加減が、預け入れ手荷物の絶妙な価格設定に現れているのでしょう。

先ほど、持ち込み手荷物を増やすオプションは無いと書きましたが、実は持ち込み手荷物を増やせる方法はあるんです。それは、座席指定のオプションで、機内前方にあるSpace OneまたはSpace Plusというタイプを選択することです。


LCCでは、座席選択は基本的に有料です。さらに座席の場所に応じて価格が異なり、到着後すぐに降機できる機内前方の席や、足元のスペースが広い席などは値段が高めに設定されています。Vuelingでは、座席を

  • Space One
  • Space Plus
  • Space
  • Front and back rows

の4つのタイプに分け、Space OneとSpace Plusの上位2タイプには、座席の選択に加えて優先搭乗Underseat bag + Cabin bagの合計2つの持ち込み手荷物というオプションが付与されています。つまり、座席選択オプションと言いつつも、実際にはそれ以外の特典も含まれているということなのです。ここがトリッキーなところで、Choose your seat という書き方をしているため、持ち込み手荷物を増やせることに多くの人が気づいていないと思います。

さらにこのカラクリには面白い点があります。「BasicにSpace OneまたはSpace Plusの座席指定オプションを加えた料金」は、Optimaの運賃よりも安いことが多いのです。

あらためて、冒頭で紹介したOptimaの特典は、

  • 無料の座席指定(ただし一部の席は追加料金が必要)
  • 最大25kgの預け入れ手荷物

でした。但し書きにあるように、Optimaで選択できる座席は、Front and back rowsのタイプのみです。Cabin bagを持ち込めて優先登場ができるSpace OneやSpace Plusは、追加料金が必要なのです。

一方で、Space OneとSpace Plusには、

  • 機体前方の座席指定
  • 優先搭乗
  • Underseat bag (max. 40x20x30 cm)と Cabin bag (max. 10 kg and 55x40x20 cm) の合計2つの持ち込み手荷物

が含まれています。

そう考えると、Optimaの特典は魅力に欠けていると感じませんか?

Space OneとSpace Plusの違いは、足元が広いかどうかだけなので、よりお値段の安いSpace Plusを選べばよいでしょう。

「夏はバックパック1つで旅行していたけれど、冬は着替えを持たなきゃいけないから、小さめのボストンバッグを持って行きたいな!」とか「街歩きできるショルダーバッグと、機内持ち込み可能なサイズのスーツケースを持っていきたいな!」といったニーズには、Basic + Space Plusという組み合わせが断然オススメです!



補足になりますが、Vueling Airlinesはバルセロナ=エル・プラット空港を拠点とするLCCです。2013年にイベリア航空とブリティッシュ・エアウェイズのグループの傘下に入ってからは、イベリア航空の国内線を置き換えつつあり、バルセロナ発着の国内線は、イベリア航空の7路線に対し、Vuelingは25路線に上ります。格安スマホとして登場したLINE Mobileが、いつの間にかソフトバンクのサブブランドになっていたのとどこか似たような感じがしますね。


Haruki Kinoshita

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